成年後見制度

 

 

成年後見制度を利用する必要性

 

 認知症,精神障害等判断能力が低下した方が日用品の購入を除いた契約行為,遺産分割協議,預貯金の解約,保険金請求,金銭管理.不動産管理等財産の管理,処分をする場合,判断能力が低下しているため円滑な財産の管理,処分をすることができず,通常の社会生活に支障が生じてしまいます。

 

 例えば,判断能力が低下しているため,以下のように通常の社会生活に支障が生じていることが考えられます。

 

@必要ではない物を購入したり,不適当な支出をする等浪費をして本人の財産を散逸させ,本人の収支状況が適切ではない。

 

A返済の見込みがないのに,クレジットカードを利用したり,お金を借りて,その負債,借金を返済できない状況にある。

 

B本人の財産が一部の親族のために不適切な支出をされたり,甘言,脅迫等によって本人の財産を搾取されて不適切な支出がされている。

 

C遺産分割協議,土地建物の売買等の法律行為をすることができない。

 

D定期預金の解約,保険金の請求をすることができない。

 

E本人の判断能力が低下しているため,通常の社会生活から逸脱しており,本人だけでなく周囲に経済的な損害が生じたり,本人と親族との関係が良好とはいえなくなってきている。

 

F判断能力が低下している本人に代わって財産の管理を行っている者の立場が利害が相反する等中立性,公平性を欠く。
 例えば,費用を請求する立場にある施設,病院等が本人の財産の管理,処分を行っている場合,本人の財産を把握している状況下にあるため,不適切な請求や不適切な支出がされるおそれがある。

 

Gその他適切な金銭の管理,請求,支払い,適切な土地建物の管理,処分をすることができない。

 

 更に,本人を支援している親族がいるものの,例えば,以下の事情がある場合,成年後見制度に基づき本人の支援者として成年後見人,保佐人,補助人に就任し,また,任意後見契約を締結することによって本人の支援者として任意後見受任者に就任する必要があります。

 

@本人の支援に関して親族の意見が統一していないため,親族間で本人の支援に支障が生じている。

 

A本人と親族との間で意思の不一致があり,本人の支援に支障が生じている。

 

B本人の支援に負担,違和感,不審等その支援が通常ではないと感じている。

 

C本人の支援に関して周囲から疑義が生じることなく,また,通常の社会生活として一般的,適切な本人の支援を望んでいる。

 

Dその他諸般の事情により本人の支援に関して支障が生じている。

 

 また,認知症等判断能力が低下していることに加えて,例えば,以下の事情がある場合,成年後見制度に基づき本人の支援者として成年後見人,保佐人,補助人を付し,また,任意後見契約を締結することによって本人の支援者として任意後見受任者を付する必要があります。

 

@親族が多忙,高齢,遠隔地に居住その他の事情により本人を支援することが困難である。

 

A本人を支援している親族が存在するものの,諸般の事情により,協同で支援をしなければ困難となる又は親族への負担が多大となる。

 

 

 そして,相続対策として,成年後見制度に基づき御本人の財産が適正に管理,処分されることの効果として,@推定相続人への不必要な生前の贈与が遮断され(特別受益としての生前贈与を遮断する。),A他の推定相続人から「御本人に代わって事実上,財産の管理をしている推定相続人が自己のために費消している。」という疑念をなくすことができ,相続紛争を予防することができます。

 

 そこで,判断能力が低下した本人のために第三者である成年後見人,保佐人,補助人,任意後見人を付する必要があります。

 

親族以外の専門職が後見人に就任する意義

 

 下記の事象について行う親族や協力できる親族が存在しないか,協力できる親族は存在するが,協同で行わないと困難となる又は親族への負担が多大となる場合,専門職が後見人に就任する意義があります。
@本人の適正な生活環境の改善,維持
A入院,行方不明等緊急事態が生じた時の対応
B死亡後の火葬等の処理

 

 本人の判断能力が低下していることによって,本人が適正な生活環境を維持することができない場合,本人の周囲等社会環境に影響を及ぼしている場合,専門職が後見人に就任する意義があります。

 

 本人が金融資産,保険金等財産の管理,処分,不動産の管理,処分,遺産分割,相続放棄,施設入所の契約,その他日用品の購入とはいえない重大な行為を場合する場合,専門職が後見人に就任する意義があります。

 

 本人の保有する財産の合計額が300万円以上であり,総合的な事情によって,その財産が散逸されるおそれがある場合,保有する財産について適切な管理ができないおそれがある場合,その他親族以外の第三者が管理することによって適切な財産の管理,処分が期待される場合,専門職が後見人に就任する意義があります。

 

 成年後見制度を利用する前から事実上,本人の財産を管理している者が総合的な事情によって,財産の管理,処分に負担や支障が生じている場合,適切な財産の管理やその事務処理を行うことができない場合,専門職が後見人に就任する意義があります。

 

 親族法,相続法の専門家である専門職(司法書士,弁護士)が後見人に就任することによって,適正な親族関係,円満な親族関係となることが期待される場合,専門職が後見人に就任する意義があります。

財産管理

 

財産管理委任契約

 

 判断能力を有するものの,車いす生活,寝たきり生活,脳梗塞等の疾病によって歩行,手が不自由である等日常生活に支障を生じている場合,日用品の購入を除いた契約行為,遺産分割協議,預貯金の解約,保険金請求,金銭管理.不動産管理等財産の管理,処分をする時,円滑な財産の管理,処分をすることができません。
 更に,相続財産の管理,処分や空き家,借地借家等法律的な専門知識を要する財産の管理,処分をする場合,法律的な専門知識を有する者の支援を受けなければ依頼をされる方とその関係者にとって最善の利益とはならないことが考えられます。

 

 財産管理委任契約は,上記のように日常生活に支障を生じている場合やその財産の管理,処分をする際に法律的な専門知識を有する司法書士の支援を受けることが最善の利益となる場合,依頼された方とその関係者にとって最善の利益となるように財産の管理,処分を委任する契約です。

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