相続放棄とは

 

 

相続放棄の効果

 

 配偶者が相続放棄をした場合,その配偶者はお亡くなりになられた方の財産だけでなく,生前に残した借金等の債務や連帯保証債務を承継することを防ぎ,配偶者は相続財産を承継せず,借金等の債務や連帯保証債務を支払う必要がなくなります。

 

 子,父母,兄弟姉妹が相続放棄をする場合,その前提として,相続順位を理解する必要があります。

 

第1順位の相続人

子(直系卑属)及び配偶者
子(直系卑属)が不存在又は相続放棄をした場合は,第2順位の相続人が相続人となる。

第2順位の相続人

父母(直系尊属)及び配偶者
父母(直系尊属)が不存在又は相続放棄をした場合は,第3順位の相続人が相続人となる。

第3順位の相続人

兄弟姉妹及び配偶者
兄弟姉妹が不存在又は相続放棄をした場合は,配偶者のみが相続人となる。
なお,配偶者も不存在又は相続放棄をした場合は,法律上,相続人が不存在となり,相続財産清算人を選任することとなります。

 

 つまり,配偶者以外の相続人である子(直系卑属),父母(直系専属)が相続放棄をすることによって,次順位の相続人である父母,兄弟姉妹に影響を及ぼすこととなります。

 

 

 配偶者,子(直系卑属),父母(直系尊属),兄弟姉妹の全てが不存在又は相続放棄をした場合,相続債務だけでなく,相続財産が存在する時は,相続人が不存在として相続財産管理人を選任することとなります。
 したがって,第3順位の相続人である兄弟姉妹及び配偶者が相続放棄をする場合,相続財産が存在する時は,相続財産を引き渡すべき事務管理者として,相続財産清算人を選任することとなります。

 

 相続放棄をしたとしても,他の共同相続人,次順位の相続人(父母,兄弟姉妹),相続人不存在の場合の相続財産清算人が直ちに相続財産の管理を始めることができるとは限らず,相続財産が管理者不在の財産として放置されることは避けるべきです。

 

 そこで,下記の規定のとおり,放棄の時に相続財産を現に占有している相続の放棄をした者は,相続財産の保存義務を負うこととされています。

 

民法940条1項
 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

 

 なお,旧民法940条1項(相続放棄をした者の義務)について,相続の放棄をした者がその義務を怠り,相続財産に損害を与えた場合は,損害賠償責任を負うとする見解があります。( 谷口知平・九貴忠彦【編】 【平成25年12月20日】 新版注釈民法【27】相続【2】 635頁 有斐閣)

 

 したがって,相続財産を現に占有している相続放棄をした者は,相続放棄をしただけでは足りず,他の共同相続人,次順位の相続人(父母,兄弟姉妹),相続人不存在の場合の相続財産清算人に対して相続財産を引き渡すまで,相続財産を保存する義務を負い,その義務を怠り,相続財産に損害を与えた場合は,損害賠償責任を負う可能性があります。

 

 

相続放棄の期限

 

 

 相続放棄には,下記のように期限があります。

 

民法915条1項 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

 

 まず,相続放棄の期限の目安となるのが,お亡くなりになっことを知った時から3か月以内です。

 

 しかし,相続放棄の申述を受理するか却下するかを決める家庭裁判所としては,お亡くなりになってから3か月を経過している場合,お亡くなりになったことを知ったのはいつであるか,相続財産,相続債務の一部の存在を知ったのはいつであるかについて,その根拠となる主張,事実関係の開示等を求めてきます。

 

 具体的には,家庭裁判所から書面(相続放棄申述の照会書)によって照会されます。

 

 これは,審判官による審問を書面化したものであるため,代理人が付いていても,家庭裁判所からの照会書は本人に送付され,代理人ではなく本人が署名することとなります。(特集 東京家裁書記官に訊く−家事部編−  LIBRA Vol.9 No.7 2009年7月号)

 

 家庭裁判所からの照会書に対する回答書については,当事務所が業務として受任し,協議した上で,記載しても構いません。

 

 

 

 

 

 

 

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